主張

韓国の不正輸出 責任ある行動をまず示せ

 やはりそうか、と言うべきか。韓国が摘発した戦略物資の不正輸出が急増し、この4年余りで156件に上ることが分かった。北朝鮮と友好関係にあるイランなどに大量破壊兵器製造に使われる物資を流す例まである。危険極まる不正の横行に驚くほかない。

 ところが、韓国側の認識は違うようだ。摘発増加は輸出管理制度を効果的に運用している証左であり、これを疑い韓国への輸出管理を厳格化した日本は不当である。そう訴えたいようだ。

 もちろん、額面通りに受け取ることなどできない。摘発を逃れた不正輸出も同時に増えているのではないか。そこがはっきりしないようでは、韓国の輸出管理は甘いという懸念を拭えない。むしろ不信は強まるばかりだ。

 12日には日韓当局者の会合があった。日本に措置の撤回を求めたいなら、その前にやるべきことがある。韓国自らが輸出管理体制の不備を改めることである。後先を間違えてはならない。

 2015年に14件だった件数が17、18年は40件台、今年は3月までに30件を超えた。化学兵器の原料に転用できる物資をパキスタンに、サリン原料をイランに、生物兵器製造に転用可能な資機材をシリアに流した事例などがある。

 極めて憂慮すべき事態だ。これらの国を経由して北朝鮮に戦略物資が流れた可能性はないのか。そうであるなら、日本の安全保障を大きく揺るがしかねない。

 摘発といっても、どこまで水際で防げたのかも判然としない。すでに流出しているなら追跡は困難だろう。日本の輸出品は韓国内で適正に管理できているか。韓国はこれらを詳(つまび)らかにすべきだ。

 かねて日本は、輸出管理の体制整備が不十分だと韓国に懸念を示してきた。例えば日本が輸出手続きの簡素化を認めている大半の国は通常兵器関連の規制を確立しているが、韓国は制度が整っていない。それらが抜本的に改善されるという確信を持てるかである。

 耳を疑うのは、康京和外相が米国のポンペオ国務長官との電話会談で日本を批判し、米企業にも悪影響が及ぶと訴えたことだ。米国に泣きついて仲裁してもらおうと考えているなら、心得違いもはなはだしい。韓国に問われているのは、すでに失墜している自国への信頼を回復させる責任ある行動を取れるかどうかである。

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