日本では非常時のロジスティクスと聞くと、軍隊など非常時対応を行う専門組織が担うものとイメージする人が多いが、現実はまったく異なる。もちろん軍隊など公的な組織がオペレーションの中心となるのはその通りだが、あくまでロジスティクスの中核を担うのは、民間の物流網である。
日常的に余分なモノも含めて大量の物資がやり取りされている社会であれば、非常時にはその一部を緊急援助物資の輸送に振り替えるだけで莫大な輸送力となる。医療チームの派遣も同じである。日常的に豊富な医療サービスが整っていれば、非常時には医療関係者のごく一部を危機対応に振り向けるだけで十分な人員を確保できる。簡単に言ってしまえば、日常生活が豊かで消費が活発な社会ほど、戦争など非常時への対応能力(ケーパビリティ)が高いのだ。
日本では太平洋戦争中、国民生活のすべてを犠牲にして戦争を遂行したが、圧倒的な経済力(当時の日本のGDPの約10倍)を持つ米国では、戦争中でも日常生活に大きな変化はなく、一般国民はいつものように週末のバーベキューやドライブを楽しんでいたという事実を忘れてはならないだろう。
中国の実力がどの程度なのか明らかになる
中国のネット通販は驚異的なペースで拡大しており、物流網は独自の進化を遂げている。主要都市では米国に匹敵する強固な物流システムが確立しており、物流センターのロボット化も進んでいる。中国国内の輸送能力は以前と比較して、飛躍的に向上したと考えられる。
中国の現時点での航空輸送力(人員の輸送キロ)は、8378億人キロとなっており、日本(1933億キロ)の4倍以上あり、突出した航空輸送能力を誇る米国に徐々に近づきつつある。国土が広いので当然といえば当然だが、道路延長は日本の13倍、乗用車の保有台数はすでに日本の2倍を突破している。鉄道による貨物輸送量は216億トンキロの日本に対して、何と90倍の1兆9200億トンキロとなっており、これも米国の水準に近い。商船の総トン数も日本の2倍なので船による輸送力も拡大している。