>「うれしゅう」は、「うれしい」と同じ意味でしょうか。
「うれしゅう」は、形容詞「うれしい」の連用形「うれしく」のウ音便です。
つまり、「うれしく」の「く」が「う」に変わったものです。
歴史的仮名遣いでは、「うれしう」と書きましたが、今では発音通り
「うれしゅう」と書きます。
ウ音便の後には「ございます」が付くことが多いのですが、「ご機嫌よろしゅう。」
というように、「~しゅう。」で言い切ることもあります。この、「~しゅう。」で
言い切る言い方に限っては、西日本で多く使われるので、方言的に使われて
いると言えるかもしれません。
>それとも方言?
方言ではなく、伝統的で規範的な日本語(共通語)です。(言い切る形は別。
上記をご参照ください。)
「うれしい」を丁寧に言いたいとき、今では「うれしいです」と言いますね。
しかし、数十年前まで、この言い方は間違った言い方であるとされてきました。
「うれしい」を丁寧に言う場合は「うれしゅうございございます。」とするのが
正しい形である、とされていたのです。
この形のもとの形は「うれしく ございます」で、その「うれしく」が上記の
ウ音便によって、「うれしゅう」と形を変えているわけです。
今では、「うれしいです」という「です」を付ける言い方に押されて、ウ音便を
使う言い方はすっかり廃れてしまいましたね。
なお、ウ音便は「うれしい」以外のすべての形容詞に起こる現象です。
例 美しく→美しゅう・大きい→大きゅう・楽しい→楽しゅう・よい→よう・悪い→悪(わる)う
●補足 音便について●
「音便」とは、発音のしやすさなどの理由で、言葉の形が変わることをいいます。
例えば「買う」という動詞に「て」を付けるとします。
規則通りだと、「買【い】て」というように、活用語尾が「い」になるはずです。しかし、
共通語では「買【っ】て」、関西方言では「買(こ)【う】て」となります。
このように、元の音が「っ」へ変わることを促音便といいます。促音とは「っ」という
つまる音のことです。「買うて」の場合は「い→う」と変化しているので、上に述べた
形容詞の場合同様ウ音便です。
音便にはほかに、元の音が「ん」(撥音)に変わる撥音便もあります。「飛ぶ+て」が
「飛【ん】で」になるような場合をいいます。